シャロンは小さな声が聞こえた椰子の木立へと視線を巡らせた。直後サーッと砂浜に隠されていたロープが2本の椰子の木を支点に現れ、同じく砂の中に隠されていた輪になったロープの先端が二つの足首を捕らえると輪が締まり足がグッと左右に引っ張られたシャロンは尻餅をついた。

シャロン「ななな、何!?ちょっと!やだ!!!」
 シャロンは慌てて左右の足に絡まったロープを解こうとしたが固く締まったロープはまったく解けずその間にも足をジワジワと引っ張られ、数分後にはシャロンは恥ずかしい体勢で完全に吊り上げられてしまった。

シャロン「いったい誰よこんな事するのはっ!正々堂々と出て来なさいよっ!」
 逆さに吊られた事にシャロンは激高し、左右を振り返りながら辺りに聞こえるように大きな声で怒鳴った。

?「あんな罠に引っかかっちゃうなんて、こんな馬鹿にポルックス様は差し上げられませんわ」
?「ホントシャロン様って簡単に騙され易すぎです」
シャロンの言葉に応じる様に椰子の木立から二人の女性が現れた。

シャロン「ミュー!!それにニーナまで!どうして・・・」
 シャロンはまさか知った顔が出てくるとは思わず驚きしかもその中にニーナがいることに更に驚いた。

ミュー「助けを呼ばれないようにあなたは口を縛って!私は腕を縛るから!」
 ミューがそう指図するとシャロンはニーナの持っていたロープで大声を出せないように口をきつく縛られてしまった。しかし腕の方はミューよりシャロンの方がはるかに力が強い為何とか縛られずにいたが、ニーナが加勢してさすがに分が悪くなり少ししてシャロンの腕は二人がかりで後ろで縛られた。

シャロン「くぅっ・・」
ミュー「はぁ・・はぁ・・・なんて力が強いのかしら」
ニーナ「それはシャロン様は昔から剣一筋ですから一人では敵いませんよっ、だから二人で罠にかけたんじゃ・・・」
ミュー「う、うるさいわねっ!わかってましたわよ・・それよりこの人さえいなくなれば後は・・ふふ」
ニーナ「?」
ミュー「あなただけ!!」
 ミューはニーナに向かってそう叫ぶとニーナの背中を強く押した。

ニーナ「きゃっ!?」
 ニーナは前によろけ膝をつかせ両手をついた。その瞬間

ズザザザ〜

 音とともに目の前の砂浜が大きくぽっかりと開き落とし穴が姿を現れニーナは目を丸くした。

ミュー「ああっ!せっかく作ったのにッ!」
ニーナ「な、何なんですかこれっ!まさか私までっ!?」
 ニーナは急いで立ち上がると驚いた表情でミューを振り返った。

ミュー「そうよ、貴方達がいなくなればポルックス様は私だけの物、それにポルックス様は光の一族の出、所詮影の一族のあなた達なんかには似合わないのよ!しかもあなた人間ですらないじゃない!」
ニーナ「愛にそんなのは関係ありませんっ!私とアストラル様の間にはアリアドネがいるんですからっ、あなたの様な一時の遊びとは違うんですっ!」
ミュー「い、一時ですってぇ〜!私とポルックス様はお互いに深い愛情を確かめ合ったの、あなたこそポルックス様のただのお情けなんじゃありませんの?」
ニーナ「アストラル様はそんな人じゃありませんっ!私を好きだからこそアリアドネが生まれたんですっ!あなたなんかアストラル様はこれっぽっちも気にもかけてませんっ!それにあなた男の人がいたじゃないですかっ!」
ミュー「あんなのいくら王子でもポルックス様の足元にすら及ばないわ、ポルックス様以外私は絶対イヤ!それにあなたの子供なんて本当にポルックス様の子供かすら怪しいわ」
ニーナ「!!!あ、あなたみたいな自分勝手な人には絶対にアストラル様は渡しませんっ!!!」
 二人はシャロンそっちのけでお互いをありとあらゆる言葉で罵り合いながら指をガッチリと絡めて争い始めた。

シャロン「ああっ!さっきから私を無視してアストラル!ポルックスって!・・・この二人になんか絶対にアストラルは渡さない!」
 シャロンは背中の方で聞こえる二人の言い争いに嫌気が差し心に思っていた事がフと口から出た。

?「呼んだ?」
シャロン「ぇ?」
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