ドサッ

 シャロンはそれに抵抗する間もなくカイザーによって壁に押さえつけられてしまった。
 カイザーはそのまま押さえつけたシャロンの体に自らの体を密着させる。
 シャロンの膨らみを見せる胸がカイザーの体に押され形を崩した。

シ「ど、どうしたのよカイザー?」
 シャロンは不意の事に少しどもりながら話しかけた。

カ「シャロン・・・」

シ「あ・・・」
 カイザーは問いを無視して顔をシャロンの頬になすりつける。
 カイザーの厚い頬の感触が自らの薄い頬を通して伝わってくる。

シ「カ・・カイザー・・・」

カ「ふっ」
 カイザーはシャロンに頬擦りしながら耳に息を吹きかけた。

シ「うひゃっ!?ちょ・・ちょっと!」
 シャロンは唐突に息を吹きかけられて驚き目を丸くした。
 それを楽しむかのようにカイザーはシャロンの耳たぶを舐めると軽く噛んだ。

シ「あっ・・んあぁ・・」
 カイザーの甘噛みが妙に心地よくシャロンは甘い声を上げた。
 するとカイザーはシャロンの金色に輝く艶やかな髪を指ですい、その髪に顔を近づけ匂いを嗅いだ。
 そしてゆっくりとシャロンの首に移動すると、戦闘で少し汗ばんだ首筋を汗を舐り取るかのように舐め上げる。

シ「あアッ!? やだそんな・・・やめ・・・」
 シャロンは少し嫌がったが、カイザーは止める事無く何度も舐め続ける。

カ「感じるだろシャロン?」

シ「え?それは・・・んんっ!!!!?」
 シャロンが答える前にカイザーは惚けたシャロンの唇を奪った。
 開いた口からカイザーの舌が進入し、シャロンの柔らかな舌に絡みつく。 
 二人の舌が交じり合い唾液が交換される。

シ「んんっ!・・んっ・・・んふっ・・んん・・んあっ・・」
シ(カイザーとキスなんかしたの・・・20年ぶりかしら・・)
 シャロンははるか昔のように感じるカイザーとの記憶を手繰らせた
 しばらくしてカイザーの舌はシャロンの舌を器用に引っ張り出すと、その唾液で滑った舌をじゅるりと吸い上げた。
 
ジュルッじゅるるっ 

シ「あんっ・・んんっ・・・んっ・・んうっ・・んっ・・」
シ(あ・・気持ち良い・・・)
 舐めまわす内に次第に舌の感覚が麻痺しだし、シャロンはその甘い心地良さに目をうっとりさせた。
 ところが運悪くカイザーの頬がシャロンの鼻の形にピタリと合わさり、シャロンは鼻で息が出来なくなってしまった。


シ「・・う゛うっ・んぅ・・カイ・・・ザ・・ン゛・・・」
シ(い・・息が・・・)
 シャロンは舌を吸われ少し息が苦しくなり表情を険しくさせた。
 その苦しそうな表情を見てカイザーは舌を離すと、シャロンは数度咳き込んだ。

シ「ケホッケホッ・・」

カ「す、すまん・・・」
 カイザーは一言謝ると、シャロンから少し離れた。

シ「だ、大丈夫、ただ・・ちょっと苦しかったから・・」

カ「・・・」
 シャロンが息を整える間カイザーはその様子を眺めていた。
 そしてシャロンが少し落ち着くのを見ると真剣な表情で一言呟いた。
 
カ「シャロン!俺は・・・お前の事が昔から好きだ・・・」

シ「へっ!!?」
 シャロンはカイザーの唐突な告白に驚き裏返ったような変な声を出した。

シ「カ、カイザーどうしたのよいきなり・・・」
  
カ「シャロン・・・お前はどうなんだ?」

シ「わ、私!?私も昔からあなたの事好きよ。強いし、カッコイイし、頭も良いし皆からも慕われてるし・・・」
 シャロンは妙に口早にそう言うと少し俯いた。

シ(ええ本当に好きよ・・・でも・・・)

カ「そろそろあの時の返事を聞かせてくれないか?」

シ「あの時の返事?」
 シャロンは何の事かとしばし考えると、カイザーに言われたとある事をフと思い出した。


シ(私との・・婚約の話・・・か)


 それは10年ほど前、今と同じようにカイザーと二人っきりになった時にカイザーから申し込まれた事だった。
 その時はシャロンはまだ自分の気持ちが決まっていないとカイザーへの即答は避けた。
 カイザーもシャロンの気持ちを読み取ったのか何も言わなかった。
 その後、戦が止みその間も幾度かカイザーに聞かれたが、全て返答をうやむやにして回答しなかった。
 それからかなりの月日が経ち、自分でもそろそろその事に対して気持ちを整理しようと思っていた所戦が再開された為、シャロンはその事を完全に忘れてしまっていた。
 今日あの男とやりあうまでは・・・。

シ(私・・・)
 シャロンは軽く目を閉じ一度深呼吸すると、しばらくして目を開きカイザーに答えた。

シ「ごめんなさい・・・私まだ・・・」
 申し訳なさそうにそう言ってシャロンはカイザーから視線を逸らせた。
 カイザーはその答えに表情を変える事無く、だが強い口調で言った。

カ「一体いつまで待てばいいんだ?」
  
シ「それは・・・・私にもわからない・・・・」
 シャロンはカイザーの問いに答えられず目を逸らせた。
 それを見て更にカイザーは尋ねる。

カ「俺が好きじゃないのか?」

シ「好きよ」

カ「好きならなぜ拒む!」
 カイザーは少し興奮して机をドンと叩いた。

シ「好きだけど・・ただ・・」 

カ「ただ?」

シ「あの人が・・・・」

カ「あの人か・・・」
 シャロンの答えにカイザーは小さく呟くと、少し呆れた感じで言い返した。

カ「もうあれから20年にもなるんだぞ」

シ「そ、それはどうだけど・・・」

カ「まだ生きていると思ってるのか?」

シ「・・・わからない・・・でも・・・」
 シャロンは切なさそうにそう言って俯いた。
 カイザーはシャロンを見て一言発した。

カ「あいつはもう死んだんだ」

シ(なっ!?)

バチッ!!!

 部屋中に乾いた高い音が鳴り響く。
 シャロンの右手がカイザーの左頬を打ち付けていた。

カ「ッ・・・シャロン!?・・・」
 カイザーは打たれた左の頬を手でさすりながらシャロンを見つめた。
 シャロンは先ほどとは違い険しい表情で声を上げた。

シ「そんなのまだわからないわ!」
 
カ「ならいつまで待つんだ!俺はお前を思って20年も待ち続けたんだぞ!」

シ「それは・・・・」

カ「くっ・・・」
 カイザーはシャロンの曖昧な答えにカッと来て眉間に皺を寄せ感情が高ぶると、シャロンの左手を掴んでいる右腕に力を込めた。

シ「い・・痛いっ!放してっ!」
 シャロンはカイザーの右手を掴み払いのけると、置いてあったマントを掴み部屋を出ようとした。
 しかしそのシャロンの腕をカイザーは再度捕らえ、勢い良く引っ張った。


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