シャロンが囲みを突破しようと足を一歩踏み出しかけたその時、左前方の輪が解けその開いた隙間より一人の大柄の中年の剣士がシャロンに歩み寄ってきた。

「お前がシャロンか?」
「貴様は?」
 シャロンはそう答えるとその剣士に向かい剣を両手で構え直した、何よりその男の発する威圧感は凄まじく長年戦い続けてきたシャロンですら一種の恐怖の様な物を感じ悪寒が全身を駆け抜けた。

「ワシは光の一族の王ファブリス。お前たちにとっては最も憎しみ深い者かな
 ファブリスはそう言うと口の端で笑った。

「貴様が...光の一族の王....」
「どうした、かかってこないのか」
「くっ...貴様さえ倒せば我ら影の一族の勝利ッ」
 邪魔なマントを外すとそう言い放ちながらシャロンは構えていた剣を上段に振りかざしファブリスに対して切りかかった。ファブリスはそれを片手に抜き放った剣で軽く受け流す。

「お前の剣はこの程度の物か?」
「ぬかせっ!」
 シャロンは力づくでファブリスに対して切りつけるがあまりにも気負い過ぎ、普段シャロンが得意とする身軽さを生かし流れるように相手の隙を見つけ切りつける攻撃がまったく見られない。
 その後もシャロンは幾度と無く切りかかるものの、ファブリスは子供をあやすかのようにその攻撃を片手で受け止め続けた。

「そろそろお終いにするか」
 ファブリスはそう言うと初めて攻勢に出た。その剣は重くしかも速い、今まで一方的に切りかかっていたシャロンは一気に防勢となり自分に対して払われる剣を防ぐのに命一杯となった。
 しかし上段より振り下ろされた剣をシャロンは何とか身を後ろに引いててかわしたものの、ファブリスは間を詰めその剣を振り下ろすのと同じ速度で下ろされていた剣を振り上げた....。


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