甲高い金属の触れ合う音が空間に木魂する....
 辺りには至る所に兵士が倒れその戦の激しさを物語る。
 捕虜になっていた光の一族の放った魔法によって影の一族の王子アストラルが行方不明になってから早数年、しかし光の一族と影の一族との戦いは未だ果てる事無く続いていた.....。

 「シャロン、ここはもう持たないそろそろ引くぞ!」
 男はそう叫びながら目の前の剣士を切って捨てる。

「まだ行けるわ、もう少し.....」
 シャロンと呼ばれた女の剣士は少し離れた所から聞こえた男の声に振り向きもせず答えると次から次へと現れる光の一族の兵士に向かって切り進む...。

「駄目だシャロン!それ以上....」
 全て言い切れぬ内に数名の新手に切り込まれカイザーは自身を守るのに精一杯となった。
 その際一瞬走らせた視線がこちらに向かって進む光の一族の一団を捉えた。

「くっ光の援軍かっ...」


 戦の行われている場所より少し離れた所より男達は戦闘を眺めていた。

「我々が押しているようだな」
「ええファブリス様」
 先頭にいる二人の内の体躯の良い一人、生やしている髭を手袋を着けた右手で撫でながらファブリスなる人物はそう呟きほくそ笑んだ。
 その髭を生やした顔は歳のわりに若々しく威厳に満ち自信に溢れ青い眼光には鋭さが宿っている、そして他の者とは明らかに違う白地に金の模様が描かれた全身を覆う甲冑が一団でのその男の身分の高さを表していた、しかしその鎧の隙間より見える体は服を着ているにもかかわらず盛り上がりを見せ、相当に鍛えられているのがわかる。

 「それにしてもあの影の一族の二人、なかなかやりおるわ。そうは思わんかメンザ」
 男はそう言いながら楽しそうな笑みを浮かべ戦いを見つめる。

 「我らの得ている情報によるとあの二人はカイザーとシャロンのようですな、二人とも相当な腕だとの事ですが....」
 と先ほどから隣に立つメンザと呼ばれる細身のやや歳をとっているように見える男が答えた。戦いの場とは思えない出で立ちからして恐らく軍師等の参謀のような者であろう。

「特にあの女....犯りたくなってきおったわ」
「ファブリス様それはなりませぬ!一国の王たるものが無闇に剣をとる等...」
「おおそれはいいな、ここ最近体がなまってきおった所、久しぶりに戦り合うのも悪くない」
「は?」
 不思議そうな顔をしているメンザをよそにニタついた顔でそう言うと配下の兵士に命令を下しメンザを置いてファブリスは一人争いの方へ進んで行く...。
 メンザがファブリスの言葉を理解するのには多少時間を必要とした。

「ファ、ファブリス様っ!!!!」
 思い立ったように目を見開くとファブリスの名を大声で叫びながら大急ぎで主を追いかけ始めた.....。


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